SPECIAL特集

インタビュー
2020.08.25
vol.3 宍倉たけるシェフ直伝! 肉料理をワンランクアップさせるグリルの使い方 〜
マルチグリルでバーベキュー&低温調理〜
いつもの家時間がちょっと華やかになるバーベキュー。野菜や肉を切って焼くだけと調理は簡単なのに賑わいがあって、子どもが楽しめるのはもちろん、大人もお酒が進みますよね。でも案外知られていないのが、おいしいお肉の焼き方。デロンギ マルチグリルがあると、焼肉やステーキ、ハンバーグなどをジューシーに焼くことができ、いま話題の低温調理も簡単に行えます。焼き方のコツは、デロンギマルチグリルアンバサダー・宍倉たけるシェフに伺いましょう。精肉店とビストロを営む宍倉シェフだからこそのワザで、肉料理がもっとおいしくなりますよ。
肉の種類や部位によって焼き方を変えるのがシェフスタイル
バーベキューで扱う肉は、牛や豚、鶏肉、羊肉とたくさんの種類があるだけでなく部位もさまざまで、そのうえ厚さや切り方もそれぞれです。なるべくなら一斉に並べず、種類ごとに火加減を変えながらバーベキューマイスターのように焼きたいもの。
「カルビやロースといった薄切り肉は、あっという間に火が通ってしまいます。特に赤身の肉は、グリルに乗せた瞬間に焼き縮みがはじまって硬くなってしまいがち。マルチグリルの最高温度である230℃に設定して、まずは表面に焼き色がつくまで焼きます。きれいに色づいたら裏返すのですが、裏面は1〜2秒さっとグリルを撫でるように焼くだけで終わりにします。表面を焼いたときに火は通っていますし、両面ともしっかり焼いてしまうと水分が飛び、せっかくのジューシーさが損なわれてしまいます」

ハラミなどの内臓系の部位、脂がのった霜降りの国産牛などは、最初の下処理も肝心とのこと。
「魚も同じなのですが、水分が多い肉はあらかじめ塩を振っておくと、余分な水分が出てきて味がぐっと濃くなります。厚みがある肉なら、塩とハーブを入れた“ソミュール液”を使用してもいいと思います。一晩ソミュール液で肉を塩漬けしてから、たっぷりの水に2時間程つけて塩抜きし、よく水気を取ります。できれば冷蔵庫でラップをしないで、2時間くらい肉を乾燥させると味が凝縮します。ソミュール液の作り方は、水に対し塩6%、砂糖3%の中に、鷹の爪、ニンニク、タイム、ローズマリー、粒胡椒(黒)、ローリエ、クローブなど少量入れ、一度沸騰させ冷まして完成です。下処理として、このソミュール液で肉を塩漬けにするのがお薦めです」
ステーキ肉は表面を先に焼いて肉汁を閉じ込める方法で
豪快にいただきたいステーキ肉は、焼き色がついても深部まで火が通っていなかったり、逆に火を通し過ぎてパサパサに硬くなってしまったり、おいしく焼くのが難しいものです。
「ステーキ肉や塊肉は、いかにジューシーさを保ちながら中まで火入れしていくか、というところがポイントになってきますから、室温に戻してから焼くことが大切です。冷たいままの肉を焼きはじめると表面ばかりが焼けてしまい、なかなか中心の温度が上がっていきません。必ず焼く2時間くらい前には冷蔵庫から出しておきましょう。肉が室温に戻ったら、旨みを流出させないよう、見えているすべての面に高温で焼き色をつけていきます。こうすることで焼いた部分がガードになり、中の水分や肉汁を閉じ込めることができます」

「焼き色がついたら、温度を下げて中心温度が上がるまで焼いていきます。肉を挟み込むようにマルチグリルをコンタクトポジションにして低温調理にすることで、焼き時間が長くなっても水分が飛びすぎず、しっとり仕上げることができます。また、フライパンで焼くよりも火が柔らかく均一に入り、どなたでもおいしく焼き上げられますよ。いま流行りだしているラム肉なら、骨つきのものをグリルで挟んで焼くのがよいでしょう。火の通りづらい骨まわりもすぐに焼けますし、ただ焼いただけなのにちょっと豪華なディナーが演出できます」

宍倉シェフのおすすめは、厚さ2〜3cmのラムチョップをコンタクトポジションで焼くステーキ。
話題の低温調理もマルチグリルならタイマーをセットするだけ
フードトレンドとなっている低温調理は、肉がしっとりと柔らかく仕上がるとあって、今も人気が続いています。家庭でもできるようにと、さまざまな低温調理器が発売されたことで広く知られるようになりましたが、マルチグリルを使えば塊肉の低温調理も簡単にできるのです。牛と豚の塊肉を使った焼き方を教えて頂いたので、動画で見てみましょう。
できあがった塊肉は弾力があって柔らか。作り置きしておいても硬くなりにくいので、お弁当にもいいですよね。でも、低温調理でいちばん心配なのは、本当に中まで火が通っているか、ということ。火の通りを確認する方法はさまざまありますが、宍倉シェフのおすすめはきちんと数字で見えるよう、温度計を使うことだそう。
「わたしたちシェフは指で肉の表面を押して、その肌感覚で肉にどのくらい火が通っているか確かめています。ただ、経験が必要になってくるので、はじめは芯温計(料理用温度計)を使うのが失敗しないと思います。肉の中心まで芯温計を刺して測り、牛肉なら59℃、豚肉なら65℃以上あればしっかりと火が通り、美味しく食べられると考えてよいでしょう。芯温計がないご家庭は、レシピにある時間を守って焼けば大丈夫ですし、マルチグリルはセットした低温を保って火を入れることができるので安心です。マルチグリルの上下の熱源で、お肉を閉じ込めるようにして焼いていくので、3cmくらいの厚みの肉を低温調理するには非常に向いているんですよね。中の水分が肉汁に変わることで、ジューシーにふっくら仕上がります」

「よく誤解されるのですが、カットしたときに赤い肉汁が出るのを血液だと思っていらっしゃるかもしれません。これは血ではなく、肉を焼いたときにタンパク質の熱変性が起こらなかったために赤いだけで、火が通っているかどうかとは関係がないんです。赤いからといって生焼けだと思わないでくださいね。ただ、ここに旨みがありますので、焼いてすぐカットせず、いったんアルミホイルに包んでベンチタイムを取ると、肉汁が落ち着いて流れ出なくなり、旨みもしっかり肉の中に閉じ込められます」
マンネリ化してくる焼肉の味も一新してスパイシーグリルに
肉がおいしく焼けたら、今度は味付けを考えてみましょう。市販のバーベキューソースや焼肉のたれでの味つけもいいのですが、食べ飽きてしまうことありますよね。
「ご経験がある方も多いと思いますが、カルビにロースに豚にハラミなど、せっかく肉の種類を豊富に用意しても、つけるソースが同じだと結局どの肉を食べても同じ味……ということになっちゃいます。味に変化がないとやはり飽きてしまいますよね。それぞれの味が楽しめるよう、いただき方にも気をつけたいものです」

そこでおすすめしたいのが、スパイスで焼く方法。このごろコンビニエンスストアでも見かけることが多くなったミックススパイスを使って、味つけしてみましょう。
「使うのは肉用のスパイスでもなくていいんです。キャベツに揉み込むためのスパイスや、パスタに合えるスパイスなどを肉に揉み込んで焼いてみてください。他にも、トリュフ塩やケイジャンスパイスを牛肉にふりかけたり、カレーに使うチャツネにラム肉やスペアリブを漬けて焼くのもおすすめです。ただ塩胡椒で焼いたり市販のタレをつけたりして食べるより、ミックスされたスパイスでもよいのでハーブや香辛料を使って焼くと、レストランのような味が楽しめます。高火力で焼くことで、肉から水分が出てこないように、うまみを閉じ込められるマルチグリルだからこそのおいしい食べ方です」

今回は特別に宍倉シェフおすすめのいただき方を5つご紹介いただきました。
牛? 豚? ハンバーグのおいしい比率のヒミツ
ハンバーグを焼くときも、マルチグリルが活躍します。おうちバーベキューでは、焼肉やステーキ以外にもハンバーグを焼いておくと、小さなお子さまやお年寄りにも食べやすくておすすめです。でも、みなさんはおいしいハンバーグをつくりたいときには、何の肉を使えばよいかご存知でしょうか?
「ハンバーグ専門店ではよく和牛100%と表現されているので、牛肉100%で作るのがおいしいと思っていらっしゃる方も多いでしょう。でも実は一般的に売られている牛挽肉は、牛肉の中でも赤身で硬い部分で作っているので、脂分が少なく、専門店が扱うようなおいしさは出ないんです。むしろ脂分の豊富な豚肉を増やして、豚肉6割、牛肉3割にし、残りの1割には牛脂を細かく刻んだものを入れて混ぜましょう」

「ハンバーガーやサンドイッチにしたいなら、肉を平らにならし、マルチグリルでしっかり包み込むようにして焼いていきます。1.5cmくらいの厚みのハンバーグなら、230℃に設定したグリルで2分もあれば焼き上がるので、子どもがお腹すいたー! と言ってから焼いてもすぐに出してあげられますよ。イングリッシュマフィンやパニーニ用のパンをマルチグリルで焼くのもおいしいのでおすすめしたいです。冷めてしまったものを温めるときにもマルチグリルが活躍しますよ」
RECIPEこだわりレシピ
簡単! チーズメルトハンバーガー

さて、それでは宍倉シェフに考案いただいたチーズメルトハンバーガーのレシピを紹介しましょう。シェフのこだわりポイントは、ミンチする肉と玉ねぎの分量が同量であること。玉ねぎをたくさん入れることであっさりと食べやすいハンバーグに仕上がります。
材料(2個分)
牛粗挽肉 | 50g |
豚粗挽肉 | 70g |
玉ねぎ(みじん切り) | 120g |
A塩 | 少々(約1.5g) |
A砂糖 | 少々(約2g) |
Aチキンブイヨン顆粒 | 少々(約1g) |
A胡椒 | お好み |
輪切りトマト | 2枚 1cm厚 |
レタスの葉 | 2枚 |
卵 | 2個 |
強力粉 | 少々 |
バター | 少々 |
食パン (マフィン、バンズ、パニーニでも可) |
4枚 |
BBQソース (またはケチャップなど) |
大さじ2 |
とろけるスライスチーズ | 2枚 |
作り方
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牛粗挽肉と豚粗挽肉、玉ねぎ、調味料Aを合わせて、粘り気が出るまでよく混ぜたら、冷蔵庫で休ませておく
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マルチグリルをBBQポジションにし、下火160℃、上火120℃に予熱する
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トマトは1cmの厚さにスライスし、レタスは洗って水分を拭いておく。卵を割って塩胡椒(分量外)をし、軽く溶いておく
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1をパンの直径に合わせて成型したら、両面に強力粉をまぶし、下面で焼く。パティのそばに少量のバターを置いて焼く。上面ではパンを焼く
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2分30秒経ったら、パンとパティをひっくり返し、パンは焼いた面に軽くバター(分量外)を塗る
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更に2分30秒経ったら電源を落とし、パンは取り出しておく。パティはひっくり返し、BBQソースを半分量だけ絡める
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下面の余熱で卵を軽く炒めるようにしてスクランブルエッグをつくる
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パンの上にレタスを敷き、7をのせる。トマトとチーズをのせたら、電源を切ったままの状態でグリルポジションにし、約1分置く
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卵の上に残りのBBQソースとパティをのせ、パンで挟む

「肉から水分が出てきてしまうので、あらかじめ仕込んでおかず、焼く直前に肉を混ぜてつくりましょう。工程が長いように感じますが、あっという間にできてしまいますよ!」
ただ焼くだけだったバーベキューが、デロンギのマルチグリルでプロの味に。柔らかくて、旨みたっぷりの肉汁が味わえる肉料理にぜひチャレンジしてみてください。
監修/宍倉たける
取材・文/吉川愛歩